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単純承認と限定承認の違い

亡くなった方の財産を引き継ぐ事が相続です。

とくに手続きを行わなければ、相続人はプラスの財産とマイナスの財産をすべて引き継ぐ事になります。

その一方で、一部のマイナス財産を放棄して相続する方法もあります。

状況に適した相続方法を選択できます。

この記事では2つの相続方法の違いを解説しています。

違いを理解し、相続の参考にしてください。

 

単純承認とは

 

一般的に「相続」と聞いてイメージする相続方法が、単純承認です。

単純承認では、故人のプラスの財産とマイナスの財産をすべて相続します。

次のような物がプラスの財産です。

 

  • 現金・預貯金
  • 不動産
  • 株などの有価証券

 

マイナスの財産は次のような物です。

 

  • ローンなどの借入金
  • 連帯保証人などの連帯債務
  • 家賃や光熱費などの未払い金

 

以下の条件では、単純承認によりすべての財産を相続すると手元にプラスの財産が残ります。

 

  • プラスの財産 1,000万円
  • マイナスの財産 600万円

 

しかし次の条件ではどうでしょうか。

 

  • プラスの財産 600万円
  • マイナスの財産 1,000万円

 

この場合、単純承認によりすべての財産を相続すると、相続人は差し引き400万円の負債を抱える事になります。

相続人が自分の財産を使い、故人の負債を弁済する事になるのです。

 

限定承認とは

 

マイナスの財産を相続する際、プラスの財産額を超えた分だけ放棄できる仕組みが限定承認です。

たとえばプラスの財産が600万円、マイナスの財産が1,000万円の場合、限定承認を選択する事で相続は次のようになります。

 

  • 引き継ぐプラスの財産 600万円
  • 引き継ぐマイナスの財産 600万円
  • 放棄するマイナスの財産 400万円

 

単純承認と違い、プラスの財産を超える分の負債は弁済の必要がありません。

また限定承認を選択した場合でも、マイナスの財産よりもプラスの財産の方が多くなる場合には、手元にプラスの財産が残ります。

相続人が損をしにくい相続方法です。

 

単純承認と限定承認の違い

 

単純承認と限定承認の大きな違いは、マイナス財産の取り扱い方でした。

そのほかにも、単純承認と限定承認には次のような違いがあります。

具体的に見ていきましょう。

 

限定承認は3か月以内に選択しなければならない

 

限定承認の選択には期限があります。

相続開始を知った日から3か月以内に限定承認の手続きをしなければなりません。

 

一方、単純承認の選択に手続きは必要ありません。

以下のような条件で自動的に単純承認を選択した事になります。

 

  • 相続開始を知った日から3か月以内に限定承認・相続放棄の手続きをしなかった
  • 相続財産の一部またはすべてを使用・処分した
  • 財産の隠ぺいなど、背信行為を行った

 

相続開始後、うっかり相続財産に手をつけてしまう事があります。

たとえば故人が住んでいた賃貸物件の解約や、故人名義の銀行口座を解約する事も、相続財産を処分したと認定される恐れがあります。

意図せず行ったとしても、単純承認と認定されてしまえば限定承認は行えません。

限定承認を選択する時には、相続財産の取り扱いに十分注意してください。

 

相続人の同意の必要性

 

単純承認の場合、すべての相続人から単純承認の同意を得る必要はありません。

相続を放棄したい人がいる時には、放棄したい人のみが相続放棄の手続きを行います。

残った相続人で相続の手続きを進めていきます。

 

しかし限定承認を行う時には、相続人全員の同意が必要です。

1人でも反対する者がいる場合、手続きを行えません。

 

手続きの複雑さ

 

相続にはさまざまな手続きが必要です。

相続開始後、まずは相続人と相続財産を確定させなければいけません。

戸籍謄本を調べて相続人を確定させ、相続財産に不動産がある場合には価値を評価します。

 

その後、単純承認では次の手続きを行います。

 

  1. 財産の分け方を協議し文書にする
  2. 実際に財産を分ける
  3. 相続税を納める

 

限定承認の場合は、以下の手続きが必要です。

 

  1. 相続人全員から同意を得る
  2. 家庭裁判所へ限定承認を行う旨を申し立てる
  3. 相続財産清算人を選び、以降の手続きを行う
  4. 請求申出の公告を行い、債権者を明らかにする
  5. 相続財産を現金化する
  6. 債権者に対して弁済する

 

限定承認は債務を清算する必要があるため、単純承認と比べて手続きが複雑になります。

 

どのような時に限定承認を選択するのか

 

単純承認は一般的に、マイナスの財産が少ない場合に利用されます。

マイナスの財産が多い場合には相続放棄を行い、プラスの財産も含めてすべて相続しない選択も可能です。

 

一方、限定承認は次のような時に利用されます。

 

  • プラスの財産よりもマイナスの財産が多く、すべて相続するのは難しい
  • プラスの財産に自宅など相続放棄したくない物が含まれている

 

限定承認を行うと不動産は競売にかけられ現金化されます。

しかし相続人には先買権があり、他人に購入される前に買い戻す事が可能です。

相続方法の違いを理解し、状況に合わせた方法を選ぶ事が大切です。

 

まとめ

 

この記事では単純承認と限定承認の違いについて解説しました。

単純承認はすべての財産を相続する方法です。

一方限定承認は、プラスの財産額を上限としてマイナスの財産を相続する方法です。

相続人全員の同意が必要な上、単純承認と比べて手続きが複雑です。

どちらを選択するべきか判断が難しい、また手続きが難しい場合には、弁護士へご相談ください。

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齋藤 理英(さいとう りえい)

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相続、自己破産、離婚、交通事故、一般民事など幅広い分野の法律相談を取り扱っており、依頼者の利益の極大化を第一に考えています。

経歴
1965年 東京都(新宿区)出身
1988年 日本大学法学部政治経済学科卒業
1988年 米国(カリフォルニア州サンフランシスコ市)留学
1989年 一般企業(コンサルティングファーム)に就職
1997年 最高裁判所司法研修所入所(第51期)
1999年 司法修習修了、弁護士名簿登録(東京弁護士会)
2009年 当事務所開設
役職、所属団体等
1998~2014年 日本大学法学部司法科研究室非常勤講師
1999年~ 東京弁護士会倒産法部会会員
2003年~ 東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員
2006年 東京弁護士会常議員(任期1年)
2006年 日本弁護士連合会代議員(任期1年)
2007~2009年 あずみ株式会社(名古屋証券取引所二部上場)社外取締役
2007~2010年 (公財)東京都暴力追放運動推進都民センター暴力追放相談委員
2009~2017年 東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会副委員長
2009年~ 事業再生実務家協会会員
2009年~ エステールホールディングス株式会社(東京証券取引所スタンダード上場)社外取締役
2012~2016年 (公財)東京都暴力追放運動推進都民センター不当要求責任者講習講師
2015年~ 株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーション(東京証券取引所スタンダード上場)社外取締役
2015年~2019年 日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会委員
2017年~2019年 東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長代行
2019年~2021年 東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長
2019年~ 府中刑務所篤志面接委員
2019年~ 鎌ヶ谷市情報公開・個人情報保護審査会委員
主な講演
・社内不祥事発生の際の、社内調査の方法とその限界
・クレーマー対策について~最近の具体例から業種別の対応策
・不動産賃貸業における暴力団排除
・暴力団排除条例施行に伴う実務対応について
・半グレ等のいわゆるグレー属性の実態と対応について
執筆
反社会的勢力リスク管理の実務(共著)
暴力団排除と企業対応の実務(共著)
離婚・離縁事件実務マニュアル改訂版(共著)
反社会的勢力を巡る判例の分析と展開(共著)
反社会的勢力を巡る判例の分析と展開II(共著)
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